閃光ばなし 雑感

閃光ばなしの感想をドン!ドン!ドン!と並べました。※ネタバレあります。

 

・はじめに

福原さん×安田さんの舞台を初めて観た。シリアスでじっくり重みのあるものを想像していたけど、終始軽快でとても楽しかった。しかし観劇後、時間が経つにつれてずっしりと感じるものがあり、これはしばらく引きずることになりそうなので気持ちが熱いうちに言語化しておこうと思う。目が追いついていないところ、台詞が拾いきれていないところなど多々あるし、インタビューも追いきれていないしパンフレットも読んでいないので間違っているところもありそうだけど(パンフ買わなかったことは猛烈に後悔している)あくまでも舞台を観た私の感想、解釈ということで。

 

・舞台のセットめちゃすごかった

幕が上がった瞬間、大きくて緻密なセットに感動した。すごく作り込まれていたし高さと奥行きを感じられるからこそ、最後のクレーンバイクのシーンの浮遊感が際立ったと思う。あと想像の5倍くらいバイクで走り回るシーンが多くてびっくりした。

 

・政子に惚れた

黒木華さんの声がめちゃくちゃ良い。「埋めよう!」「殺しとけばよかったね!」とカラッと言い放つ政子に痺れた。我関せずといったマイペースさ、かと思えば真正面から食ってかかったり勢いと調子の良さで押し切ったり。でもそれだけじゃない聡明さや繊細さ、優しさが見え隠れするところも含めて全部が大好き。私も政子になりたい。

 

・皆ってだれ?

劇中たびたび投げかけられた「皆って誰?」という問い。皆ってたぶんまやかしなんだよね。これは社会がいう"皆"から弾かれた人たちの話であり、まやかしの中にたった二人、自分と妹の存在を見つけた是政の話であり、そのまやかしに日々惑わされている私たちの話だと思う。

私たちはいつも見えない皆に怯えて、顔色を窺って、足並みを揃えて、そのくせ確かに目の前に存在している皆のことは平気で見て見ぬふりをする。存在しない皆をつくって、存在する皆をいなかったことにする、そういう政治、そういう社会、そういう私たち。皆って誰なんだろうね。

 

・ラストシーンの考察など

強烈に印象に残っているラストシーン、あれは結局どういう意味なのか。ともに観劇したマブ安田担との感想会を経ての私の答えをまとまらないなりに書き留めておく。

素直に台詞を拾うと、二人の乗っていたバイクは壊れなかった、二人は生きていてこの先も生きていく、と解釈できる。そして政子が"誰か"に向けて踊るのは、"皆"から弾かれた人たちや、客席に座る私たちへの鼓舞や救いというふうにも受け取れる。実際観終わった直後はそう思っていたし。

でも考えれば考えるほどあの不思議な空気感とリアリティのなさが引っかかる。バイクが壊れないわけないし、二人が生き延びたとはどうしても思えない。衝撃音が聞こえて、白バイの人が倒れている、そして暗転する。あのシーンで二人の物語は終わっているのではないか。3人で踊るあのシーンが政子の夢なのか、それとも死後の世界なのかはわからないけど、とにかくあのラストは現実ではないと思った。そしてあの踊りはもうこの世にはいない是政に向けたものだったのかなと。(確か「政子の踊りはご先祖様が帰ってくる」みたいな台詞があったし、踊り自体も盆踊りっぽいので。)

政子と踊った二人が電柱守と売春婦だったという点も、あの現実味のない空気を助長している。二人は、あのどん詰まりの住民の中でも一際マイノリティ、身寄りがない存在として描かれているように感じた。特に電柱守は存在そのものが不思議だ。エレンという名前は明かされていたけど。(エレンは男性名にも女性名にもあって、トルコ語では聖人という意味もあるらしい。)電柱守とかいう謎のポジションで基本的に傍観者。でもなんだか政子の味方っぽい。外国人?ホームレス?ペット?(犬とか猫とか)電柱の妖精?地縛霊?政子のイマジナリーフレンド?など色々な説を考えた。怪談にありがちな、思い出話をしている時の「え、あいつ誰だっけ」「そんな奴いた?」「いたよ、あんたも喋ってたじゃん」「そうだっけ」「待ってあの日って何人いたっけ」「え、ひとり多くない…?え……誰…?」ってやつ。そういう不安定な存在のように思えたんだけど皆さんはどうですか?(どうですか?)あなたのラストシーン考察、電柱守考察、ぜひ聞かせてください……。

あと是政と政子の関係性も気になっていて、二人は紛うことなき兄妹ではあるけど、是政の政子に対する態度にはただのシスコンでは説明しきれない違和感があった。俺の妹だ、俺が守らなきゃという気持ちが強すぎるあまり自分と妹の境界線がわからなくなっているのが私が勝手に抱いているシスコンのイメージ。もちろん是政にもそういう部分は見受けられた。でもなんというか、腫れ物に触るとはまた違うけど、誰より近くてでもちょっと遠いような、政子に対して神聖さのようなものを感じているのかなと思ったり思わなかったり…。是政が政子に「(私の言うこと)否定してもいいんだよ」といったようなことを言われるシーンがあったけど(あったよね?)あれは是政の人柄を象徴していて印象的だった。この辺りのことも語り合いたいので観た方はぜひ……。

それにしても全体を通して受け取り方や解釈の分かれるシーンが多くて本当に面白かったしあと3回くらい観たいよ……。

 

・おわりに

自分自身の生き方を問われているような気持ちになる台詞も多く、最初から最後まで夢中で観た。"どん詰まり"とか私の人生かよ、と思ったりした。

明日からは心の中に是政と政子を住まわせて、「愛してやるよ」の心意気と「埋めよう!」の精神で強く生きていこう。